人形塚後くらいの話

 カテキョの授業中。
 勉強の合間に高橋さんがなにげなくたずねた。
「姉妹でこれだけ性格ちがったら、ケンカとかしないの?」
「するよ。しょっちゅうしてる」
 小さいころはよく泣かされたものだ。
 それを思うと姉は最近ちょっと優しくなったのかもしれない。
「でも仲よさそうじゃん」
「うん。お姉ちゃん大好き」
 なんといっても長年いっしょに育ってきた仲だ。
 彼女は面倒見がいいし、買い物に行ったり遊んだりするととても楽しい。それに、意外とデリケートな所があったりするかわいい人なのだ。
 キ、と物音がしてふり返ると、姉がドアの前に立っていた。
 手にはお茶菓子ののったおぼん。
 母に頼まれておやつを持ってきてくれたらしい。彼女は机にお茶を置きながら、チラリとこちらを見た。
「……まあ、あたしもあんたのことはそこそこかわいいと思ってるけど」
 その声はどこまでもぶっきらぼうだが、顔はほんのり赤くそまっている。
 ツンデレ? それはツンデレなの? お姉ちゃん。
 ひそかに期待していたら、高橋さんが片手でぺちぺち机をたたいて冷ややかにいう。
「姉妹でイチャイチャすんのやめようか」
 それから数日間。
 姉がやたらとかまってくれるようになったが、高橋さんの前で彼女の話題が禁止になった。