オオゲジサマ小話


●目覚めちゃったきっかけ

 オオゲジサマは本性以外でも、一度食べたものにならなんにでも化けることができる。
 絶世の美女に化けていると、やはり男がよってくる。
 あれこれつくしていいなりになってくれる内はいいが、少し気を許すと性的な意味で襲いかかってくる。適当に殺して食べるが、オオゲジサマは追いかけて殺す方が好きだった。
 美青年に化けると女がよってくる。
 こちらは性的な目で見ても襲ってくることは少ないが、嫉妬にかられてヒステリーをおこす者がいる。場合によっては殺して食べる。
 神獣らしく、神々しい姿でいると色んな人が拝んでくる。
 けれどほとんどは拝むばかりで会話が成立しないし、目も合わせずにひざまずく。こういう姿でいるときは殺生をひかえろと歴代の御巫にいわれるので少し窮屈。
 バケモノでいると、みんな悲鳴を上げてパーッと逃げていく。
 気持ち悪い生き物は純粋に好きなのだが、老若男女とわずとり乱す様を見ていると、なんだか楽しくなってしまって。
 気がつけばハマっていた。
「考えごとですか?」
 ナギの問いにオオゲジサマがくすりと笑う。
「ナギはいつも僕のそばにいるね」
「まあ、巫女ですから」
 彼女は当然のように答えた。