50話 VS雪の王リベンジ

 ドロシー姫、オズ、カーライルの3人が魔神の加護を受けたものの、スケアとフリッツ司祭は受けなかった。
 スケアはもともと空を飛べるし、司祭はすでに神の加護を受けているから必要ないらしい。
 すぐに攻めこむのかと思っていたけど、朝をまつことになった。
 夜は私やクーさまがパワーアップしていいんだけど、雪の王の力も強くなってしまうからだ。
 オズたちがアルバ帝国に明日の作戦について話したり、対雪の王用に兵器を作るためでもあるらしい。
 そして翌朝。
 日の出と共に私たちはシアーナ城をおとずれた。
 海の上に浮く城は見事な庭のせいか、1つの島のようにみえる。
 兵士さんとシアーナ男性たちはなにか見なれない道具をかかえていた。
 手早く組み立てて、地面に設置していく。彼らは兵器の建設や操作、運搬を専門とする工兵(こうへい)と呼ばれるそうだ。
 組み立てた兵器はルファスによると”投石器”というらしい。
 高さ4~5メートルくらいで、木材と鉄、ロープとかでできている。重そうな土台部分には車輪がついていて、移動できるようになっていた。
 本来はお城の固い壁を遠くから壊したりするのに使うんだけど、今回は雪の王を攻撃するように作ったんだとか。
 でっかいしごっついし、なんかすごそうだけど、アレで本当に当たるのかな?
 アルバ帝国の人たちもなにか準備をしてるみたいだけど、遠いからよくわからない。
 先頭が投石器と工兵、弓兵、槍兵、攻撃専門の魔法使い。
 まん中にはスノータイガーに乗った騎士たちとお姫さま。魔力の高いシアーナ女性と護衛のカーライル、オズ。
 後ろの方に私とルファス、回復と支援役の司祭フリッツとその部下である助祭たち。
 上空に分身したスケアが2人。
 クーさまは一時的に姿を消している。
 もうすぐこちらの開戦準備がととのう、という時に雪の王はあらわれた。
 ほぼ準備はできていたから、ギリギリ間に合ったといっていいと思う。
「よし、始めるか」
 そんな一声と同時に、私の身体はクーさまにのっとられていた。

◆

 空にヒビが入って割れてしまったようにみえる、次元の裂けめ。
 そこから顔をのぞかせるようにして、雪の王があらわれた。
 氷のように青く長い、ウロコのような髪、4本の角。
 まっ白な顔に赤い目。
 首はあるけど、そこから下はなく、顔と両手だけが宙に浮いている。
 オズの号令で兵隊さんが号令の笛を吹き、先頭にいる集団が攻撃を始めた。
 しなる、というか、はねる、というか。
 投石器は不思議な動きで岩をはるか上空まで飛ばしていく。
 槍はちょっと届いてないけど、弓や攻撃魔法はちゃんと当たってるし、投石器の岩もちゃんと効いてるみたい。
 致命傷にはほど遠いけど、じわじわダメージあたえてるって感じ。雷の矢がささった手をみると少しかわいそう。
 雪の王はまったく動じずにチラリとこちらに目を動かした。
「封印が一部とけたとは聞いていましたが、まさか人間と手を組んで攻めてくるとは思いませんでしたよ。本当に人間をたぶらかすのがお上手ですね」
 しゃべった!
 前はいきなり攻撃だったけど、さすがに100年ぶりに戦う知り合いには声をかけたりするらしい。
 ところが、
「うるさい。死ね!」
 クーさまはそれだけ答えて呪文の詠唱を続けた。
 はたからみると、私が雪の王めがけて中指立てたようにしかみえないので、ルファスがギョッとしていた。
 わかってると思うけど、これ私じゃないからね? クーさまだからね!
 声をかけても聞こえないみたいで、反応がない。
 そんなとき、まばゆい光が辺りをつつんだ。
 以前、革命軍が全滅させられた雪の王の攻撃だ。
 いまは肉体がなくて、私はクーさまが宿る自分の身体のちょっと上くらいにぷかぷか浮いている。
 そんな幽霊みたいな状態なのに、背筋にぞわーっと悪寒が走った。
 たぶん、死を予感したときに感じる恐怖ってやつ。
 ヤバッ、と身をちぢめた瞬間、味方全体を白い光の壁がつつんだ。
 お姫さまとシアーナ女性たちが張ってくれるといっていた結界……つまりは氷属性の防御魔法ってやつだろう。
 雪の王の攻撃とそっくりで、みわけがつかない色の光だ。
 ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
 雪の王の両手から数えきれないほどの光がはなたれ、こちら側の光の壁を攻撃していく。
 壁は攻撃をちゃんとはじいてはいるんだけど、衝撃までは殺しきれないみたい。
 攻撃されるたびに大地が激しくゆれて、みんなどんどん地面にたおれていく。
 ルファスでさえしゃがんでるのに、クーさまよく立っていられるなぁ。
 と思ったらちょっと浮いてた。ずるい。
 ようやく攻撃が止まったかと思うと、砂煙……この場合雪煙? のむこうに、お姫さまたちの姿がみえた。
 気になってふよふよ近づいてみると、お姫さまが号泣していた。
 よっぽど怖かったらしい。
 芸術品のように美しい顔は青ざめ、盛大に涙を流している。
 地面にぺったりとしゃがみこみ、ハッキリわかるくらいガクガクぶるぶると震えていた。
「うわあーん! 怖いよー! ママー!」
 ドロシー姫が初めて同じ13歳の女の子にみえた。
 ていうかママて。性格変わってない?
 泣きながら結界はってくれたのかと思うと、健気だ。
「姫! お気を確かに! ほ~らクマちゃんですよ~」
 カーライルさんはどこからかクマのぬいぐるみを取りだした。
「はぁいぼく白クマたん~! ドロシーのために踊るから見ててネ!」
 ……ガチムチでスキンヘッド強面のおじさんが甲高い裏声でぬいぐるみを動かし、お姫さまはちょっと嬉しそうにそれをみている。
 恐怖のあまり精神年齢が5歳くらいに退行しちゃってるのかもしれない。
 姫の変わりぶりにビックリして出遅れちゃった感のあるオズは、それを嫉妬に狂ったまなざしでにらんだけど、すぐに気を取り直した。
「……姫を頼んだよ!」
 いまが攻撃のチャンスとばかりにオズが駆けだす。
 私はあんまり詳しく聞いてないんだけど、魔神の加護ってどんな感じなんだろ?
 そのころ、上空では雪の王が両手をかまえ、モンスターの大群を生み出していた。