51話 VS雪の王リベンジ②

 雪の王が祈るように組み合わせた両手から、モンスターたちが次々と生み出されていく。
 ざっと見た感じ、白ワイバーンが10匹。
 スノーモンキーが30匹、よくわからない変なのが5匹。
 ゴリラよりさらにごつくていかつい、2足歩行のサルっぽい巨人が5匹。
 四角い顔したスノーゴーレムが10匹。
 長いヤリみたいな角があるシロクマが5匹。
 20メートルくらいのでっかい紫のタコが1匹。
 飛びだしたモンスターたちは革命軍の兵士たちに襲いかかり、反対に雪の王は後ろへ下がってそれを見守っている。
 ちょっと休憩、みたいな感じだ。
 革命軍の先頭組はモンスターたちに集中攻撃されて手こずっている。
 それを見て中央組の騎士たちが動いた。
 スノータイガーで雪原を駆け、先頭組を援護していく。
 氷属性しか使えないシアーナ女性たちとお姫さま、カーライルは中央に残り、破れた結界をはり直している。
 クーさまはあいかわらず呪文詠唱を続けているけど、あと25分も持ちこたえられるかな……?
 雷竜の杖を使えないのがもどかしい。
 司祭や助祭たちが全軍に雷属性の加護をあたえてるから、こっちの方がちょっと優勢ではあるんだけど……。
 ワイバーンやでっかいタコのバケモノに殴り飛ばされたりして、かなり苦戦してるみたい。
 エドラやルファスってすごく強いんだな~ってしみじみ思う。
 ユーグリアス王国の魔法使いがはなつ雷魔法は、スノーモンキー1匹たおすのがやっとだ。エドラみたいにぜんぶまとめて攻撃できないみたいだし、ワイバーンやタコにはあんまり効いてない。
 騎士たちが斬りかかっても、ルファスみたいにスパッと斬れてないし……。
 やっぱりクーさまは精神体でがんばってもらって、私とルファスも前線で戦った方がよくない?
 なんて考えてしまう。
 そんなとき、合図の笛が鳴りひびいた。
 これはたしか、『加護もちは雪の王をねらえ、ザコを相手にするな』って意味のはず。
 いや、ザコっていうには強すぎるけど、この大群のモンスター無限にわいてくるから、相手してたらキリがないのは確かだ。
 かといって、ザコを無視すると兵士たちがやられる。
 特に活躍しないままワイバーンに踏みつぶされちゃったヤリ兵部隊がかわいそう……。
 だから、ザコは兵士に任せて、加護もちで雪の王をねらう作戦に切り替えたんだろう。
 そういえば加護って、どんな感じなんだろ? 私あんまり聞かされてないんだよね。
 クーさまの加護を受けたのは姫、オズ、カーライル、ルファス。
 もともと加護を持っているのはフリッツ司祭。
 必要ないといっていたのはスケア。
 姫の加護は確かに強力なバリアをはっているけど……?
 オズの様子をみてみると、彼は前線まで移動していた。
 スノータイガーで素早く雪原を駆け、モンスターの大群の中をつっきったオズは、一気に雪の王の右手に接近する。
 ワイバーンのアイスブレスを飛びこえ、タコの触手を切落しながら進む彼はもうそれだけでけっこう格好良かったけど、どうみても攻撃が届きそうにない距離だ。
 どうするんだろうとみていたら、彼は王の手の真下から剣を一振りした。
 通常攻撃のときとちがって、剣がまばゆく光る。
 雷属性のそれと似てるけど、ちょっと色のちがう光が衝撃波のように剣からのびて雪の王の手をつつんだ。
 王の右手が細かく震えだす。
 たぶんマヒ状態だ。
 そのまま左手もやっちゃえばいいものを、オズは一目散に撤退していく。
 状態異常はもともとオズの技だから、あの衝撃波みたいなのが魔神の加護かな?
 空中の敵に攻撃が届くようにしただけって感じだけど、ないよりはマシだ。
 エドラと同じように、1度使うとインターバルが必要なのかも。
 オズは先頭組の後方あたりにつくと、そこで指揮をとり始めた。
 カーライルは姫やシアーナ女性たちのいる中央に残ったまま、先頭組をかいくぐって襲ってきたモンスターの相手をしている。
 実年齢35歳にしては、50~60代くらいに見えちゃうカーライルさんだけど、やっぱり強い。
 スノーモンキーの頭を一撃でこっぱみじんに粉砕し、サル型巨人の突進をひらりとかわして首を斬り落としてしまった。
 っていくらなんでも強すぎるような……と思ってよくみたら、カーライルさんの全身が黒い炎につつまれている。
 特に体が燃えてるわけじゃなさそうだけど、あれが魔神の加護なのかな?
 オズとはちがって攻撃力がはね上がっていそうな感じ。
 もともとパワー型戦士っぽいけど、ワイバーンの羽を引きちぎっちゃうのはやりすぎでしょ……お姫さまが引いてるよ。また泣いちゃいそうなおびえっぷりだよ。
 ちなみにルファスはというと、ぶっちゃけかなりヒマそうだった。
 カーライルは姫とシアーナ女性たちの護衛、ルファスはクーさまの護衛が戦闘中のお仕事だから持ち場を動けない。
 でも、ほとんどの敵は先頭にいるし、たまに進んできた敵もカーライルさんが殺しちゃう。
 ごくまれにカーライルさんの攻撃さえもかわして進んでくる敵がいるけど、ルファスは一瞬で終わらせるから本当にやることがないのだ。
 戦闘が始まってから、彼はまだ1歩も動いてない。
 たまにやってくる敵を一振りで瞬殺した後は、じっと雪の王をみすえている。
 攻撃がとどく範囲がかなり広がっているあたりが魔神の加護なのかもしれない。
 よくみると、彼の剣もカーライルと同じ黒い炎をおびていた。
 てことは、雪の王に攻撃できるのって、実質オズだけなのでは?
 なんて考えて、ようやく彼女の存在を思いだした。
 獣人でもある気高い女騎士は、私の頭上でずっと大活躍していた。
 スケアって強かったんだ。
 なんて思うのは失礼かな。
 鳥になって空を飛べたり、2人に分身したり。どちらかというと攻撃より偵察むきの能力なのに、彼女はすて身で雪の王に連続攻撃していた。
 マヒ状態の王の右手に体当たりしたり、大きなクチバシを使って指を食いちぎったり。
 王を守ろうとするモンスターたちから狙われてるけど、上手にかわし、反撃している。
 スケア1号が王の手を、2号が他のモンスターを攻撃するという役割分担らしい。
 ワシってウサギやシカを狩ったりするそうなんだけど、まさしくその狩りの光景をみているような気分になる。
 ビュンビュン飛び回りながら巨大タコの足を食いちぎったりしてるけど……あれもしかして食べてない?
 ちょっと親近感。
 いいなぁ。タコっていかにもおいしそうだよね。後でどんな魔物がおいしかったか聞いてみよう。
 なんてことを考えている間に、スケア1号が王の右手を粉々に破壊した。
 残るは左手と顔。
 もしかしてこれ、クーさまの出番をまたなくても勝てちゃうのでは?
 そんな私の油断を感じとったように、雪の王が動いた。
「システィアーナはまっしろな雪が好きなんだ。あまり汚さないでくれ」
 王の左手が暴れだしたのである。
 彼がぶんっと一振りしただけで戦列がぐちゃぐちゃにかき乱された。
 投石器はふっ飛び、魔法使いはつぶれ、弓がくだけていく。
 汚すなって、雪の大地を血で汚してるのは雪の王本人だと思うよ!
 さらに追い打ちをかけるように、中央にいる姫さまたちめがけて左手が振り下ろされた。
「姫! お逃げください!」
 カーライルが必死の形相で左手を攻撃するけれど、さすがに防ぎれそうにない。
 オズは遠くて間に合わないし、姫や魔法使いたちは腰を抜かしている。
 ルファスが剣に手をのばしたとき、それより速く巨大な鉄球が王の左手を撃ち落とした。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
 10? 30? 50?
 数えきれないほどの鉄球が流星のようにふりそそぎ、ついには王の左手がバアンとくだけちる。
「はあ……はあ……これぞ、全知全能の神エーテルピアさまのお力です!」
 じゃらじゃらと鎖でつながれた鉄球を振り回していたのは、司祭フリッツだった。
 一般的なモーニングスターって棒の先に鎖がついてて、小さな鉄球が1つついてるだけだらしいんだけど……司祭のもつそれには鉄球が10個くらいついてるし、サイズも異様に大きい。
 さっき100個近くあるようにみえたのは残像だったみたいだけど、あんな大きな鉄球持ってたっけ? 以前みたのよりパワーアップしてるかも。
「さすがです、司祭さま」
 ルファスがほほえむ。
 攻撃も回復もできる司祭さまって、じつは人間の中で1番すごいのかも……。
 残るは王の顔だけ、と思って前をむくと、雪の王がフフフと笑った。
 さっき壊したばかりの両手が同時に復活する。
「こんなもの、その気になればすぐ再生できる」
 みんなの顔が絶望に染まった。
 やばい。クーさま早くして!